早いものでもう2025年も年の瀬ですよ。年の瀬あるある、早いがち。
逆に「やっと年末かよ。今年は長かったなぁ」と言っている人はいるのだろうか、いや、いない(反語)。
というわけでかれこれ3年ほど恒例となっている振り返り記事です。今回は映画編。新作・旧作(リバイバル上映含む)部門で、それぞれベスト5まで選定しました。
もう最近はそもそも作品に勝手に点数を采配し、順位付けを行うこと自体が”ザ・カルチャー好きマン”的仕草すぎなのでは?という自戒も最近芽生えているのだけど、それはそれとして、あくまで記録としての側面にフォーカスしてやっていきたいと思います。ランキング記事ですがランキングそれ自体に意味があるというより、あくまで振り返りという点が肝要であって……(モニョモニョ)。
【2025年公開作部門】
5位 JUNK WORLD

堀貴秀監督によるストップモーション映画。前作『JUNK HEAD』からの続編で、壮大で複雑な地下世界を舞台にした失われた未来の物語。
前作以上にハードSFな世界観が構築され、ストップモーションのクオリティも格段に向上しており、キモカワな人形やギニョールを使用していなければかなりダークな作品となっていただろうが、「テイキアツアタマイタイ」みたいな架空言語が作風を「やや」マイルドにしており、どこか隙のあるかわいらしい作品に仕上がっている。感動と微笑みと憂鬱が渦となってやってくる鑑賞後感だった。
三部作構成とのことで、次作も楽しみ。
4位 8番出口

主演は二宮和也と小松菜奈、劇伴は中田ヤスタカ、スタイリストは伊賀大介ときて監督はあの川村元気……!ド真ん中すぎる!
「広告みたいな映画だな~」と感じたのは、脚本に佐藤雅彦ゼミの門下生がいるからに起因しているようだった。語弊を恐れずに言うと、”裏ピタゴラスイッチ”みたいな映画だ。
感想としては……面白かった!ストーリーもへったくれもない原作のゲームにほどよくストーリーを付与していて、翻案が見事だった。
二宮演じる主人公には名前がなく、そういう点でTENETの「名もなき男」を想起させるのだけど(思えばあれもループだ。繰り返しの物語では主人公の名前は脱色される傾向にあるのかも?)、どうやら氷河期世代のフリーターらしいとか、元カノが妊娠しているらしいとか、過去に親関係でトラウマを抱えているっぽいとか、人間ドラマというほどの濃密さではない設定が箇条書きのように提示される。それゆえ、映画に感情移入することを大事にしているような人にとってはいまいち乗りきれないだろうけど、その塩梅が個人的にはちょうどよかった。主人公でありながら過度に傾斜をかけすぎない、キャラクター属性としてテンポを損なわない程度のスパイス。主人公が喘息であるという設定も映画館の音響だと見ていて辛いものがあるのだけど、結果的に異変に対するリアクションを”セリフで説明する”ことを排除することに寄与しており、必然性があったと感じた。
中盤以降に登場する「子ども」は、二宮がこれから対面することになるであろう子どもでもあるし、自分の幼少期時代の写し鏡とも解釈できる。そういう点でも「ループ」してるんですよね~~!うまいなあ!
という描写の数々もあり、終始「トラウマ克服とセルフケア」がテーマとして前景化してくる。そういう意味でもかなりベタではあるのだけど、前述した通りアートワークとか美術がかなりハイセンスなのもあって、あらゆるジャンルでパロられるだろうなという確信があった。デザインの勝利すぎる。
先日公開されたチェンソーマン総集編とか、kurayamisakaの新譜とか、この8番出口とか、一見トリッキーで人を選びそうな作風のものが、扱っているテーマや作品のアプローチではかなりベタという点に共時性を感じる。時代が一周した感。
3位 教皇選挙

今年イチ”かっこいい”映画。
偉大なる先代の死を経て、あらたなローマ教皇を選出するための選挙に奮闘する中間管理職が、候補者たちの360°評価を聞いては調整に奔走し…を繰り返す、JTCに勤める身としては刺さりまくる映画だった。ラストシーンの静謐な解放感も良い。年度末に観てよかった。
2位 スーパーマン

陰謀論や生成AIから紛争に至るまで様々な無秩序がひしめくカオスな現代を、それでも地に足つけて立ち続けることそのものを逃げずに描ききった”スーパーヒーロー作品”だった。これまでのスーパーマンは「スーパー」であることにフォーカスしていたが、今作は「マン」に重きを置いている。
クリストファー・ノーラン監督以降のダークで陰鬱なアメコミ映画に対する揺り戻しでもなく、かといって単純な原点回帰オリジン的な映画でもない、今の、2025年でしか生まれ得ない時代性と必然性に溢れた傑作。やっぱり、人間が今を生きるには「人間性」を捨てずにいることしか道はないわけで、その代替不可能性を握りしめて歩いていくしかないというか。それでいて笑えるし、痛快だし、かっこいいし、ハートフル。
とはいえ、現実にスーパーマンはいない。だからこそ、誰もがヒーローになれる。「優しさこそが一番のパンク」という現代を、泥臭く生き抜いていこう。
1位 ふつうの子ども

上田唯士、10才、小学4年生。 生き物が好きな、いたってふつうの男子。 そんな彼が恋をした。 相手は、“環境問題・意識高い系女子”の三宅心愛。 彼女に近づこうと、心愛が夢中になっている“環境活動”を共にすることに。 そこにクラスのちょっぴり問題児・橋本陽斗も加わり、3人が始めた活動は思わぬ方向に――
映画『ふつうの子ども』公式サイトより
2025年公開作。先日プライムにて配信開始されたので視聴。傑作でした。
子どもらの生活の描写が瑞々しく、『怪物』に代表される是枝作品なんかとは対照的。あっけらかんとしているのが微笑ましくて、自分の脳内のタンスにしまってあった「こういう子いるよな~」「学校ってこうだったよな~」というノスタルジアともまた違った感情が引き出される。
SDGsの重大さに気づいた子どもたちが、思い付きによるある行動を起こしそれがどんどんエスカレートし、本人らも想像だにしない大ごとになってしまう……という展開へ続くが、そこからの終盤での「会議室のシーン」がとにかく凄かった。若干ネタバレになるが、瀧内公美がスーパーヴィラン的な役回りで出てきてとんでもない存在感を放つ。「いる」すぎる。
終始「WOKE」的言動を起こす心愛の家庭環境が透けて見える感じとか、劇中では描写されていないが想像に難くない陽斗の普段の家庭でのふるまいとか、一見平凡で問題のなさそうな主人公:唯士の両親のたまに出るノンデリ発言など、一言に「家族」といっても当然にそのあり方は多様なわけで、それをクライマックス15分ほどで浮き彫りにする作劇にビビった。
加えて、普段は基本的に穏やかな担任や校長先生も困惑している姿さえ、どこまでも「ふつう」だった。ふつうの人たち。
冒頭からその会議室のシーンまで一貫して思っていたことがあって、それは最後のカットが映ったときに自分の中でより強固なものとなった。
それは、「どうかこの子どもたちの傍には笑って受け止めてくれる人がいてほしい」ということだ。
以下同率6位…
無名の人生
今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は
入国審査
チェンソーマン レゼ篇
トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦
【旧作・リバイバル部門】
5位 奇跡

是枝監督の目で世界を見てみたいと思う。胸が痛くなるくらいに純粋すぎる子供たちの思いが音となって大人に届かんとする姿の美しさよ。奇跡なんか起きなくても、希望は消えない。
4位 海がきこえる

ジブリの中でも割とマイナー作品というのもあって完全に初見だったのだが、とても素晴らしかった。
ジブリシリーズとは思えないほど「何も起きない」シナリオだが、裏を返せば「日本中のどこでも起きてそうな普遍さ」があるということ。ラブストーリーっぽいイメージがあったけど、意外とラブ上等!でもなく、男友達同士のやや歪んだブロマンスもプロットの背骨として機能している。「当時は気付かなかったけど、学校での生活は狭い世界だった」という事実は最近自分でもよく考えていたトピックだったので、個人的にリンクしたという点でも良かったです。
それにしても、あの頃の飛行機のイヤホンって固かったよな~。
3位 ナミビアの砂漠

序盤は「都市生活におけるヴォイド」みたいなものがテーマなのかと思って観ていたけど、話が進むにつれ徐々にピントが変わってくる。想像以上に「病理」の話だった。
自身のルーツがわからず不安定な生活を過ごしているから、ふらふらと自由奔放に見えてその実何も満たされていない。この国で何万人といるであろう若者の一人としての、等身大の生きづらさ。クリエイターの彼氏と同棲し、いろいろありながらも幸せな日々を過ごして……とは全くならずで、そのままならなさが凄い。というかカナ役の河合優実が凄すぎる。凄まじく新時代のアイコンだった。
元カレも今カレも同じく2Lのペットボトルの水を常備していて、どちらもカナにちゃんと水分を摂るように忠告する。心がまさに砂漠のようにカラカラに乾ききったカナは何かに打ち込むでもなく、ナミビアの砂漠のライブカメラをスマホでボーっと眺める。そのライブカメラの映像では、オリックスたちもただただ水を飲んではフラフラと歩きまわる様子が映し出されていた……。
2位 落下の王国

17年ぶりの上映かつ配給会社が倒産しているゆえDVDも廃盤というシネフィル泣かせの名作が待望のリバイバル上映!ということで観に行ってきた。
自己言及的な映画が最近増えていると常々言っているが、今作も(意外にも)例にもれず”映画についての映画”だった。が、それはいわゆる「クリエイティブマンセー」的な創作礼賛映画ではなく、「落下による怪我」という共通点を通して出会った、年齢も出自も性別も異なる他者が対話をするという、あくまで泥臭いフィロソフィーが通底している。人の人生に影響を与えるのは結局のところ他者でしかないという、ともすれば現代でこそ忘却されがちな自明すぎるテーゼ。
物語にアレクサンドリアが介入してからどこか呑気でヘラヘラした空気が漂う点や、追手の衣装の着想がレントゲン技師のヘルメットという、病棟での日々に立脚しているのも可愛げがあって好き。
再び「落下」の世界に改めて身を投じるロイと、平和な日常を取り戻すアレクサンドリアの対比も美しかった。そして、創作が人の魂を救うというのはスタントマンの本懐でもあり、映画そのものの役割でもある。
1位 リンダ リンダ リンダ

映画として”すべて”があった。全シーンが良かったし、マジですべてだった。
特に、ブルーハーツを初めて聴いたときのソンの泣き顔や文化祭でのダーツの的を映さないなど、”未来の象徴とか確定したもの”を悉くカメラ外に配置しているのが象徴的だった。青春は「未来を求める『今』」にしかないということを固く示している。
以下同率6位…
リトル・ダンサー
ロスト・イン・トランスレーション
花様年華
総括
2025年は部署異動、結婚式、ZINEやグッズ制作にイベント出展、転職活動、ギタースクール通い、謎の病気が発病とライフイベントやシンプル災いにより近年稀に見る多忙さだったのもあり、観たい映画も満足に観れない一年という印象だった。嬉しい出来事もたくさんあったが身体の不調に関しては本当に勘弁していただきたい。
リバイバル上映やリメイクムーブメントの高まりは今年も留まるところを知らない。かつて観れなかった作品や、サブスク未配信の映画が劇場で観れる機会に恵まれたのはありがたい。
が、過去の持つ”エモ”の手軽な愉快さへ過度に陶酔する危うさについても認識せざるを得ず、「人間は結局過去にしか昂ることができない」という持論をより強固なものとする側面もある一年だったなぁと感じる。
『国宝』や『爆弾』など実力派俳優陣を揃えたビッグバジェット邦画の成績が伸びているのも2025年の特徴ともいえるだろう。「日本の人気映画ってコナンと鬼滅くらいしかないよね」と一部の洋画ファンに言われていたのがほんの数年前だったのに対して、今はかなり流れが変わっているように思う。コアな映画好きこそ、より邦画を観ているイメージ。
一方で、先述したリメイク・リバイバルムーブメントに全BETで乗っかるのもどこか気が引けるところがあり、拝金主義的な臭いがする流れもないこともない。シャバいものともショボいものとも距離を取りつつ、自分の嗅覚を頼りに、引き続き時間が許す限りいろいろ触れていきたいと思う。






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