ガンダムシリーズ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』(以下、ジークアクス)は全員観ましたか?観ましたね。ネタバレ全開でいろいろ感じたことを書いていきます。
拡張性
ジークアクスの最も優れた点は「宇宙世紀作品をさらに拡張しうる力技なソリューションを提供した」ところだ。
ガンダムシリーズってそれはもう多種多様な作品が存在しているのだけど、中でも「宇宙世紀シリーズ」と呼ばれる、一作目の機動戦士ガンダムの続編となる作品が人気の中心を占めているんですよ。そして、宇宙世紀シリーズはすでに作品数が飽和状態で、以下の年表のように、劇中における数年ごとにかなりの作品がミチミチに乱立してしまっている。

ほんで、ジークアクスはこれを

こうしたんですよ。
もはやロボアニメの枠を超えてレジェンドコンテンツと化しているファーストガンダムの「架空戦記」を描くことで、これまで連綿と受け継がれてきた宇宙世紀作品たちを一旦ゼロにし、新たな歴史を生み出そうとしている。MCUをはじめハリウッド作品ではマルチバース作品が席巻しているが、1970年代から続く一大アニメシリーズにおいてここにきて全く異なる分岐点を設定するというところに、ガンダムというコンテンツがまだ発展途上であるという、並々ならぬ覚悟のようなものを感じて滾ってしまった。
二つのはじまり
本作には、二つの第一話が存在する。一年戦争勃発~終戦までのプロローグと、マチュたちによる本編だ。ファーストガンダムのオリジン(と、そのif)を見せた上で新たな物語へと展開させていくという、かなり思い切った構成となっている。これにより、ガンダムシリーズのファンはシャアがガンダムを強奪するプロローグに、新規ファンはマチュが改札から始まる、人生を変える出来事に度肝を抜かれる構造になっている。過去と未来を交差させる、新たな可能性の提示という作品構造がもうガンダムそのものなのだ。
気になった点
純粋に気になった点もいくつかある。
00~10年代的エモさ
突如崩壊する日常、主人公がその場の成り行きで危険を顧みず巨大ロボに搭乗、形成逆転シーンでBPM爆速主題歌カットイン……などアドレナリンがドバドバ誘発されるコテコテな展開が目白押しだ。
これこそがロボアニメのフォーマットでもあるので、意地悪な書き方をしたところでそれまでなのだけど、必要以上にメタで見ると「またこのノリか~~」と思うこともできる。
とはいえ結局、こうした00~10年代的エモさを孕んだアニメがドンズバの世代としては生理的に感動してしまうのよな。
でも百合シーンは雑すぎますよ。
原作をどうしたいんや?

上述した通り、本作ではファーストガンダムの第一話を丁寧に再解釈しつつ、「シャアがガンダムを強奪していたら……」というifルートで物語が始まる。ファーストガンダムのセリフや構図が多く出てくるとはいえ、まるで二次創作で見られるような突飛な展開が続いていく。
観ていて「フハハ、もっとやれ!!」と「こんなこと、していいんですか……?」という感情が両立した。批判ではなく、富野作品をどう魔改造して、どうガンダムとして着地させていくのだろうと。あと、富野本人が観たらどう感じるのだろうと。この辺りはTVでの本放送を楽しみに待ちます。
鶴巻監督作品です(大声)
座組がアナウンスされたときに懸念(?)されていた庵野秀明要素は、彼が脚本を担当したプロローグ部分にしか感じられなかった(ソロモンに突っ込むときのペガサス級の三次元戦闘シーンくらいでは?)。なのでこれを「シン・ガンダム」と呼ぶのはお門違いだよ。普通に、めちゃくちゃ鶴巻作品です。
スクラップアンドビルド
いろいろ書いたけれども、やっぱり僕は歴史あるシリーズの制作側がその歴史の重厚さに自覚的でありながら、「お約束」とされる前提をブッ壊して根幹から覆すのが好きすぎる。なぜなら、それは創作にのみ、また作り手にのみ許されるスクラップアンドビルドだからだ。歴史の堆積とその堆積の否定を繰り返すことで、作品が作品としての大いなる意味を獲得していく過程。何度でも創って壊して造っていく姿は、愛おしくてかっこいい。
あ~早く放送してくれ~~!
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