このウェブマガジンを始めたきっかけの一つに、「自分が本気で良いと思っているものが、もっともっと知られていってほしい」という思いがあるんですよ。過去を辿れば、結構な幼少期くらいから「俺が好きなものたちをなんでだれも知らんねん!!」みたいなことはよく感じていた気がする。昨今は推しだなんだとよく言われておりますが、20年くらい前から一足先に歪んだ推し活をしていたようなものである。
過小評価されていると感じるバンド
そんな感情を久々に思い出したので、「もっと評価されるべきだろ」と個人的に思っている邦ロックバンドをまとめてみた。ここに書くことでバズって一躍スターダムへ、ということは99%有り得ないけれど、そういうきっかけで始めたサイトにわざわざ書くことによる何かしらの意味みたいなものもあるのではなかろうかと、そういうエゴイスティックなロマンチシズムでやらせてもうてます。
条件としては、既に一定のキャリアがあり、また一定の評価はされている(いわゆるミュージシャンズミュージシャンとしての立ち位置が強い人々)ものの、まだまだこんな評価じゃ足りねえぞと勝手に感じているバンドたちです。
THE NOVEMBERS
真っ先に思い浮かんだのが言わずと知れたジャパニーズオルタナの雄、THE NOVEMBERS。楽曲クオリティもリリース数もパフォーマンスも一切言うことなしのバンドで、現在も爆裂バリバリに活動中。一度観ると度肝を抜かれること間違いなしの劇薬みたいなライブをしているが、だからこそまだまだ過小評価だと思うバンドの一つだ。初期と今とで音楽性がガラッと変わるのはキャリアが長いバンドにありがちだが、例に漏れず彼らもマスロック、シューゲイザー、ニューウェイブ、オルタナから、クラシックの要素を取り入れたりなどかなり幅広く、アルバムごとに追っていくのも聴きごたえがあります。
Galileo Galilei
稀代の音楽家・尾崎雄貴率いる四人組バンドGalileo Galilei。10代のうちにメジャーデビューまで到達するというまさに彗星の如き大躍進を遂げるも、2016年の初の武道館公演をもって活動を一時休止。その後2022年にメンバーチェンジを経て華々しく復活を遂げ、活動再開からまだ3年にも満たない現在、すでにフルアルバムを三枚リリースするという果てなきクリエイティビティを誇る。
もともと才覚溢れるニューカマーバンドだったが、活動再開後は、持ち前の少年性のある透き通った歌声に年齢を重ねたことによる深みも出てきて完全なる覚醒状態。他の同世代バンドと比べても、ズバ抜けて歌が上手すぎるし、そもそも声が良すぎる。嫌われない声のLv100といったところだ。楽曲も、BUMPやアジカンなどのオーソドックスなJ-Rockと、The 1975などの海外インディーポップの遺伝子をハイレベルに融合・昇華させたハイクオリティなものばかりで、邦楽ファン・洋楽ファン双方の人気を獲得している。このバランス感覚には本当に目を見張るものがある。
レミオロメン
「粉雪と3月9日のバンドねー」じゃねえんだよ。1stを聴け!
NICO Touches the Walls
2004年に結成され、2019年に突如活動を終了した四人組バンド、NICO Touches the Walls。なんでだよおおお!
どうせ君たちのことだから「爽やかイケメンのアニソンバンド」くらいにしか思っていないのでしょうけど、かなり変なバンドですからね?覚悟の準備をしておいて下さい。
ニコがアニメ関係のタイアップでポピュラリティを獲得していったという側面は確かにあるが、やはりどう転んでも実力派であるという点が強かった。骨太なロックからフォークやカントリーにパワーポップなど、縦横無尽に垣根を超えていく音楽性はもちろん、特筆すべきはVo.光村の歌声にある。どう考えても超かっこいい声なのだけど、歌い方などが一筋縄ではいかないというか、兎にも角にも声に”物語性”がある。ルーツの一人が桑田佳祐だというのもあってか、かなりクセのあるボーカリゼーションで、フロントマンというより「ボーカリスト」という印象を受ける。言わずもがな演奏技術も高いし、楽曲も粒ぞろいだ。
GOING UNDER GROUND
1991年より活動しているバンド、GOING UNDER GROUND。今回紹介するメンツの中では最年長。メンバーチェンジを経て現在は三人で活動中。彼らに関してはもう、メロと声がとことん良すぎる!三曲くらい聴いてもらえればわかると思うんですけど、日本人の脳の奥の方にあるノスタルジーの潜在意識みたいなものをド直球にくすぐるメロディセンスをしているんですよ。
「次こう来たら気持ち良いだろうな~」というメロディがドンズバ真ん中でやってくる。ポップネスから逃げない作曲者が一番強いんや。そういうところも含めてスピッツとのシンパシーを感じる。オススメです。
良いと思ったものを
というわけで過小評価されていると感じるバンドたちでした。結局はこれも主観にすぎないわけだし、そもそも上のどのバンドも既に一定の評価はなされている。なんだけど、過小評価されていると感じた以上書きたくなったから書いてみた。
繰り返しになるが、「もうそこそこ人気だよね~」と、既に評価はされている上でこれじゃまだまだ全然足りないのだ。具体名は出さないが、紅白歌合戦に出演したりMステの常連だったりするアーティストたちはどれも素晴らしいが、彼らがその面々に並んでも何ら遜色がないと本気で思っているんですよ。「魅力が足りないのではなく知られてないだけなのでは?」と、本気で、思う。
このウェブマガジンを始めたきっかけとしては「自分が好きなものを好き勝手に書くぞ」というプリミティブな想いが先行していたのだけど、最近は少しずつ変容していて。今では「自分が本気で良いと思ったものを、本気で良いと思ってくれる人のために本気で勧めていきたい」という、また別のプリミティブさが発芽してきている。
そして、あり得ないとはわかりつつも、万が一にもそれでスターダムを駆け上がっていくきっかけの一つになったらライター冥利に尽きるというもの。瞬間最大風速的なバズには興味はないが、一人二人とファンが増えるなどの、細やかな一助になんとかなってほしいなと陰ながら願っている。
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