『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』

2026年1月に劇場公開された、ガンダムシリーズの新作映画。公開から22日間で興行収入20億円、観客動員数120万人を突破するという、シリーズものの続編アニメとしてはかなりの成績を収めている本作。
僕も公開してすぐに劇場へ観に行ったけれど、作画や演出などどれもが”令和のアニメーションの金字塔”といってもいい作品で、2020年代のアニメとして確実にチェックポイントたり得る映画だった。過去のガンダム作品に触れずに観たとしても、そのクオリティに度肝を抜かれるのではないだろうか。
そこで今回は、『キルケーの魔女』を楽しむために、まず前作『閃光のハサウェイ』を今一度おさらいしておこうと思う。そして、その上でやはり一点、感じたことがある。
『閃光のハサウェイ』シリーズが新規ファンを獲得している現状、30年前にガンダムファンに言っても信じてもらえなくない?
『閃光のハサウェイ』とは
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』はガンダムシリーズの1つで、原作は富野由悠季(ガンダムシリーズ生みの親)の小説作品。本作はこの原作小説をベースとしており、”ファーストガンダム”と呼ばれる『機動戦士ガンダム』などと同じく宇宙世紀を舞台とする作品で、あのホワイトベース(主人公側の戦艦)艦長ブライト・ノアの息子『ハサウェイ・ノア』を主人公とする物語だ。
ストーリー/キャラ紹介
第二次ネオ・ジオン戦争(シャアの反乱)から12年。
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』公式サイトより引用
U.C.0105——。地球連邦政府の腐敗は地球の汚染を加速させ、強制的に民間人を宇宙へと連行する非人道的な政策「人狩り」も行っていた。そんな連邦政府高官を暗殺するという苛烈な行為で抵抗を開始したのが、反地球連邦政府運動「マフティー」だ。リーダーの名は「マフティー・ナビーユ・エリン」。その正体は、一年戦争も戦った連邦軍大佐ブライト・ノアの息子「ハサウェイ」であった。アムロ・レイとシャア・アズナブルの理念と理想、意志を宿した戦士として道を切り拓こうとするハサウェイだが、連邦軍大佐ケネス・スレッグと謎の美少女ギギ・アンダルシアとの出会いがその運命を大きく変えていく。
誰がわかんねんこんな初見殺しあらすじ。
当サイトをご覧いただいてる皆様におかれましては、ガンダムシリーズは全作品履修済みと存じておりますが、一応めちゃくちゃ噛み砕いて説明しますと、
- 舞台は西暦の後の暦号「宇宙世紀(U.C.)」。増えすぎた地球人口や激化する環境問題に対し、人類は宇宙に「スペースコロニー」と呼ばれる巨大な居住区を建造し、移住していった。
- U.C.0079年、サイド3と呼ばれるスペースコロニー地区が「ジオン公国」を名乗り、宇宙移民者の自治権を要求。地球連邦政府に対し宣戦を布告し、通称「一年戦争」が勃発(アムロとシャアもここで戦う)。
- いろいろあって一年戦争は終結(ここまでがファーストガンダムの話)。
- さらにいろいろあってアムロとシャアは一旦仲間になるも、なんやかんやでシャアはアムロらと再び敵対。人類を懲らしめるべく小惑星を地球に落とそうとするシャアは、アムロらと再び戦い、双方行方不明となる……(ここまでが『逆襲のシャア』)。
- その続きが本作『閃光のハサウェイ』シリーズ。主人公は一年戦争時からのアムロの戦友ブライト・ノアの息子である「ハサウェイ・ノア」。腐敗が進む連邦政府と、それを是正すべく蜂起したテロ組織「マフティー」など、事態はさらに混沌としてゆく。そして、ハサウェイの行く末とは……!
かな~~~~り端折ってこんな感じ。
初見にはきつくない?
という前提知識がかなり求められるというのもあって、本作からガンダムに触れるのはかなりハードルが高いのでは?と思っている。『閃光のハサウェイ』だけを見ても正直、この複雑な背景を理解するのは難しいと思うんですよ(とはいえ、単純な勧善懲悪や二項対立では片付けられない世界観こそガンダムシリーズの魅力でもあります)。
他にも懸念要素を挙げるとするなら
- ややネタバレになるが、原作はかなりの鬱展開
- メカデザインが尖りすぎ
などなど。
特に2.メカデザについて
皆さんが『ガンダム』と聞いて想像するMS(モビルスーツ。ロボットのことです)は、大抵

こういうのや

まあせいぜいこういうのだろう。
それに対して閃光のハサウェイの主人公機が

これ。尖りすぎ。六本木のオブジェかい。
対するライバル機が

これだ。尖りすぎ。美大生の卒制かい。
この通り、およそ大ヒットする作品には思えないというか、かなり人を選ぶアニメだという印象を受けると思う。
なぜヒットした?
そんなシリーズがなぜここまでのヒット作となっているのか、要因として主に以下の3つかなと。
作画が凄すぎる
アニメの要ともいえる「作画」。
少しでも作画崩壊しようものなら、今では「X」などとわけのわからないアルファベット一文字を自称する謎のSNSでオタクたちがスクショを掲載しバズりまくってトレンド入り、途端に”クソアニメ”と認定され、『【悲報】ハサウェイ、作画酷すぎ』とまとめブログに転載され例のキャベツの画像が貼られまくる未来は想像に難くないが、本作では杞憂も杞憂。何気ない食事シーンから手に汗握るアクションシーン・茹だるような夏の熱気や美麗なビーチなど実写と遜色ない没入感のあるスーパーハイクオリティな作画だ。
それこそファーストガンダムをリアルタイムで観ていた人は、日本のアニメの進化に感動すること間違いなし。

洋画ライクな演出
そもそもガンダムシリーズ自体がそうなんだけど、ロボアニメでありながら環境問題やテロリズムによる世界の歪み、人間のエゴなど、フォーカスする切り口が非常にラディカルなんですよ。先述した通り単純な勧善懲悪モノからは程遠く、多種多様なキャラクターたちがそれぞれに信念や正義、思想を持ち合わせていて、時には衝突し、時にはわかり合おうと歩み寄る。そういう意味では戦争映画だとかドキュメンタリーに近いと思っているんだけど、今作は演出面などが特にハリウッド映画のような質感を伴っている。
冒頭の政府高官ジェット機「ハウンゼン」での一連のシーンにおけるSEやガジェット操作音なども、非常に実写的な手触りだ。各種サブスクリプションサービスで観れるので冒頭10分だけでも観てみてほしい。
あとこれは意外にも今までのガンダム作品であまりなかったんだけど、市民目線でのMS戦闘が描写されているんですよ。
リゾート地が突如戦火に包まれる恐怖・パニックで逃げ惑う市民・巨大な人型兵器が眩いほど輝くビームライフルとサーベルで暴れ回る姿は、さながらハリウッドの怪獣映画のような臨場感と恐怖感を覚える。「これロボアニメですよね?」と一瞬戸惑うレベル。
楽曲
3つ目は楽曲だ。
劇伴はこれまで何度もガンダムシリーズに携わってきた、安心と信頼の作曲家:澤野弘之氏。

彼が手掛けた『ガンダムUC』の楽曲が、ニュース番組等でよく使用されているのを聞いたことがある。
これまでは壮大なオーケストラ調の楽曲が多いイメージだったが、今作ではEDMやシティポップの要素も取り入れた挑戦的な楽曲もあり、かつ非常に耳馴染みが良い。
そして主題歌は[Alexandros]だ。
疾走感ある正統派邦ロックチューンでありながら、MVは『city』『Rocknrolla!』時代のオマージュを感じさせるものとなっており、新規と古参の双方を向くという矛盾をさりげなく達成できてしまっている。彼らのこの”活動歴の長さ故のバランス感覚”は目を見張るものがありますね。映画のヒットと相まって再生回数もうなぎのぼり。謎MADが量産され本人たちにまで届く始末だ。
『キルケーの魔女』鑑賞前にぜひ
初見殺しなあらすじ紹介と、素人ながらヒット要因の分析をしてみたけれども、結局のところ観てみりゃわかる。ガンダムシリーズどころか現代のアニメ作品としてエポックメイキングなわけです。
これを機に皆さんもガンダム沼へ落ちてみるのはいかがでしょうか?あ、当サイトをご覧いただいてる皆様におかれましては、ガンダムシリーズは全作品履修済みでしたね。


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