映画『きみの色』を観た。

『聲の形』や『リズと青い鳥』などで知られる山田尚子監督作品で、脚本は同二作も担当した吉田玲子という座組。特に熱心に追っているわけではないのだけど、各所で話題だったので気になっていた作品だった。
音楽について
昨今は、”音楽”についてのアニメや映画が本当に多い。映画館やサブスクを見渡せばマルチバースか音楽についての作品が6割を占めている気がする。ウソです盛りました。
振り返れば『ボヘミアン・ラプソディ』が一つのフォーマットを定着させたのは間違いないだろうが、『ぼっち・ざ・ろっく!』や今作も例に漏れずクライマックスがライブシーンで、ほぼノーカットで立て続けに数曲演奏される形式だった。心理的にも一番盛り上がる箇所をクライマックスに持ってくるのはエンタメとして最適解の一つとなりつつある。
あらすじ
全寮制のミッションスクールに通うトツ子は、うれしい色、楽しい色、穏やかな色など、幼いころから人が「色」として見える。そんなトツ子は、同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女・きみ、街の片隅にある古書店で出会った音楽好きの少年・ルイの3人でバンドを組むことになる。離島の古い教会を練習場所に、それぞれ悩みを抱える3人は音楽によって心を通わせていき、いつしか友情とほのかな恋のような感情が芽生え始める。
映画.comより
主要キャラはバンドメンバーであるトツ子・きみ・ルイの三人なのだが、公式あらすじにある「恋のような感情」は少し違うと思う。唯一の男性メンバーであるルイはなんならややアセクシュアルのような描写が目立つし、不純物のない絆で繋がれていく印象を受けた。
色
特に好きなポイントが、トツ子の持つ”人の色が視える特性”というのが、その人のパーソナルカラー的なところ。これがたとえばその人の感情由来のものだとしたら途端にシャバくなっていた気がする。落ち込んでいるクラスメイトを見て、物憂げに「なにか悲しい色が見える……とっても、悲しい色……」とか言うのはこの作品の空気感に合わない。「ルイ君は緑で、きみちゃんは青」と告げて、終了!だったのが小気味よい。きっとブルべ冬みたいな感じだ。
尖りすぎな劇中バンド
テルミンというロシアの電子楽器を使用する劇中バンド「しろねこ堂」がライブで演奏する三曲は、New Order風の楽曲、フィードバックノイズを取り入れた内省的なアンビエント、相対性理論風のオルタナでハチャメチャに三者三様だった。たまんねぇ……。
他にもなぜか突如UnderworldのBorn Slippy Nuxxが流れる日常シーンがあったりと、美麗な作画やしっとりとした質感とは裏腹に不思議な余韻を残す作品だった。観終わってしばらく考えていると、あるバンドを思い出した。
これ、Bialystocksじゃね?
『きみの色』=Bialystocks説

Bialystocksは甫木元空・菊池剛からなる二人組バンド。ボーカル・ギターとキーボード・コーラスという構成はしろねこ堂のメンバーと2/3が被っているし、バンド結成のきっかけとなったのは、甫木元自らが監督を務める映画 『はるねこ』らしい。どことなくリンクしている気がするぞこれ……。
透明感が服を着て歩いているような甫木元による超美麗ボーカルによりどんなシチュエーションにも馴染む普遍的な聴き心地を獲得しているが、よくよく歌詞を見ると少し、というかかなり変。ワードチョイスはサラサラとしているのに文意が通りきっていないというか、センテンスとして見ると意味がよく分からない箇所がある。なのにメロディにガチっと嵌っていて、曲として聴くとなぜか気持ちいい。作画や演出の美しさに目を奪われつつも、よくよく考えると変なディテールもあるというのはまさにこの映画と似たものを感じる。
すみません、強固な論拠があるわけではないのでこの話はこの辺で終わりです。もはや陰謀論的なこじつけに近いけれども、聴いてもらえれば近しいものを感じる気がする。共感覚的な感想になっちゃったが、どうかご理解ください(?)。きみの色とBialystocks、オススメです。
コメント