『APPLE VINEGAR -Music Award- 2026 Opening Party』に行ってきた。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのVo.後藤正文(以下、ゴッチ)氏が主催する、APPLE VINEGAR -Music Award-のイベントライブ。アクトは2025年の大賞を受賞したDos MonosとMONO NO AWAREで、オープニングアクトはゴッチのバンドGotch Band。完全にうひょ~といった面々である。奇しくもどちらもポッドキャスト『奇奇怪怪』のパーソナリティで、どちらも「Mono」ですね。
『APPLE VINEGAR -Music Award-』とは
2018年にゴッチを中心に立ち上げられた、新進気鋭のミュージシャンが発表したアルバムに贈られる作品賞。芥川賞を参考に、ミュージシャンがキャリア初期に発表した作品を評価する仕組みを作り、今後の作品制作をサポートする賞金を贈呈することで若手ミュージシャンを応援したいという思いを持ってスタートさせたとのこと。
そもそも音源制作にツアーなど本業のバンドがかなり多忙なはずなのに、文筆活動、APPLE VINEGAR&レコーディングスタジオの立ち上げに自主企画フェス開催にも尽力していく姿勢には本当に頭が上がらないですよ。なまじ会社員やってるからこそ、その心労が想像できてしまう。いや、むしろ想像できないな。相当大変だと思う。いつもお疲れ様ですゴッチさん。

立ち上げにあたりどのような想いがあったかは、ゴッチによる上記note記事を見ていただければわかるだろう。音源を制作する際の「コスト」や、キャリア初期における作品の評価システムについてはどのアーティストも頭を悩ませる問題であり、上記の記事でも今回のライブでも語っていた通りで、本人の苦学生としての生活も根本にあるのは想像に難くない。
Gotch Band(O.A.)
オープニングアクトは主催ゴッチによるバンド、Gotch Band。
フォークやガレージ、アンビエントなどを横断した音楽性が垣間見え、アジカンとは違った”あそび”が感じられるアンサンブルだった。『A Girl in Love』での轟音アウトロなどでも、丁寧な空間設計がなされており、プロデューサー視点での音像が反映されている印象で、アジカンとは違う実験場としての試みが感じられた。
そしてもはや当たり前だけど、今日もいい声だった(先日のGEZANの配信で1時間近く詩を朗読したがゆえに喉が枯れていたらしいが、それを感じさせないリカバリーもさすが)。
っていうかソロもいい曲ばかりすぎる。いつ寝てるんだ。
セットリスト
Good New Times
Wonderland
Lives By The Sea
A Girl in Love
Dos Monos
2組目はDos Monos。
前回見たのは2025年のシンクロニシティでDJセットだったのに対して、今回はバンドセットだったが、TaiTan氏が「Dos Monosのバンドセットのライブより楽しいものは、少なくとも現存する世の中には存在しない」と語る通り、圧倒的な知性と身体性の同時爆発なライブだった。「この人たち全てを音楽にしてるな」と感じた。

一曲目『HAROU』での没 AkA NGSのパートでは視界の都合上、急にステージ下から登場したように見えたのだけど、完全にエヴァ初号機の出撃シーンだった。

「Dos Monosは中学時代からの友人で結成して、初めて買ったCDはアジカンの『アフターダーク』で、大人になってから初めての友達が玉置周啓だった。こんなに感慨深い日はない」と、これまでの歩みについて語るTaiTan氏。すべては繋がっていく。
一方で、妻と娘と親も会場に来ているという荘子itは先日の衆院選にも触れ、「父」でも「息子」でも「東京在住の男性」としてでもなく、「一人の人間」として現在地について語る姿が印象的だった。その語りの聡明さの裏側には膨大なインプットと葛藤が伺えるし、今を生きていくことの切実さにグッときてしまう。
8/21にはキャリア最大規模でもあるZepp Shinjukuでワンマン公演を行うそう。Zepp!!
セットリスト
HAROU
MOUNTAIN D
QUE GI
Oz
月光outro
Lee Merlin
LETSUGOU
HI NO TORI
in 20XX
MONO NO AWARE
トリはMONO NO AWARE。
一曲目である『同釜』の「咀嚼音が気になってはいたのね」で全員のコーラスが入るの、冷静に考えてどんな曲やねんと思っていたら、ポエトリーラップパート(?)のヤバさに喰らって閉口するの、いつまで経っても慣れません。
あと、どんどんライブバンドになってませんか!?ライブ版の『かむかもしかもにどもかも!』とか、もはやBPM200超のプログレですよ。あんなに素晴らしい演奏の一方でMCがちょっと不器用なのもラヴ。
MCでは「Gt.成順は同じ八丈島出身だが、ずっとAcid Black Cherry一筋で、自分はフジファブリック一筋だった」と語るVo.周啓氏。
「こうして趣味嗜好が異なる人たちが交わりバンドを組んでいる。そして、今日みたいなイベントではゴッチやDos Monosなど、今までだったら交わることもないだろうと考えていた人たちと交わっている。今ここに残ってくれているお客さんたちも、全員考えも人間性も異なるはずなのに、ここにいてくれている。それはもう『僕たちと演奏している』といっていいと思います。」と続ける。
フロアからの「レッツゴー!」の掛け声にも「レッツゴー!」と叫び返し、「ライブで初めて言ったわ!」とはにかみながら言うのが、もうすべてだと思った。
そして演奏されるのが、『東京』。
みんながみんな 幸せになる方法などない
MONO NO AWARE『東京』より
無理くり手をつないでも 足並みなどそろわない
ニクいぜ……。肩小突きたくなる。
セットリスト
同釜
異邦人
夢の中で
かむかもしかもにどもかも!
幽霊船
走馬灯
東京
”本当”を追い求めて
2バンド∔1ユニットとも、全員全く異なる音楽性なのに「交わった」のは、それぞれがそれぞれで「やってきた」結果だろうし、”本当さ”を追い求め続けたからなのだろうと思う。
あくまで音楽活動を起点としていながら、文筆、ポッドキャスト、フェスやイベント開催、スタジオ設立、作品賞制度設計にNPO法人立ち上げなど、フィールドを拡張しながらそれぞれが「マジ」でやってきたから。そして、言ってしまえばそのマジさこそが生きることそのものなのだろうし、あの場に集まった人たちもその必然性を感じ取っていたのだろう。文脈的にも関係的にも、シンプルに一本の線でつながる配置。
加えて、あくまでAPPLE VINEGARの祭典という建付けだが、『奇奇怪怪』を聴いていなかったらこんなに幸福な出会いはなかったわけで、過去にあったいろいろな出来事ももう遡及的に承認していこうと思った。なんというか、演者もオーディエンスも全員、悩みながらムカつきながらも「それでも」と言い続けているのだろうと、真っ直ぐに思ったんだよな(岡田斗司夫)。
本当にいいイベントだった。次も絶対参加したい。マジを求めて生き続けよう。



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