The Otals『All Imperfect Summerland』レビュー|総力戦で示す“世界一とっつきやすいシューゲイザー”の第1期最終回

disc review
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二人組カートゥーン・シューゲイズバンドThe Otalsが先日、2ndフルアルバム『All Imperfect Summerland』をリリースした。

Introduction

とんでもない熱量が惜しみなく投下されているアルバム。元々リリースペースがかなりコンスタントだった彼・彼女らだが、フルアルバムということで新曲も多数収録されている。いったいどんな制作体制なんだ!?

総力戦と語るだけあって、これまで以上に圧倒的粒ぞろいな曲ばかり。どこを切り取っても眩いノイズ・ポップネス。「いい曲だったな~」と思った束の間、すぐさまいい曲が流れてくる。いい意味で体力が求められるアルバムに仕上がっている。毎日襟を正して聴いている。

名盤としての佇まい

「世界一とっつきやすいシューゲイザー」を標榜している彼・彼女らだけあって、うっとりするほど美しいメロディばかりで、お世辞抜きに国内外へ広がっていくべきだと思っている。

名盤のジャケットには名盤たる佇まいがあると思っていて。宇多田ヒカルの『BADモード』とか柴田聡子の『Your Favorite Things』とか、名盤とされるアルバムって、ジャケットがその盤そのものの意義を揺らぎなく示していると思うんですよ。ジャケからもう名盤っていう。

そしてそれはこのオタルズのアルバムもそう。「いいイラストだな~」を超えて、そういう次元に到達していると言えるのではないか。

ピックアップレビュー

ここで、好きな曲・重要だと思われる曲をいくつかピックアップしてみる。

Moon Landing!

アイドルグループ『水槽とクレマチス』への提供曲で、セルフカバーとなる楽曲。シンセが前面に出たエレクトロなノイズポップで、どこか切ない空気感を醸しているあたり、サイバーパンク エッジランナーズの劇中歌の『I Really Want to Stay at Your House』とのシンパシーを勝手ながら感じる。つまり名曲。

天使にマーチンを (Summerland Ver.)

再録バージョン。この曲で特に顕著だが、マリーナの歌い方かなり変えましたよね。特にこの曲に関しては過去作と比べてもキャラ立ちしているかわいらしさがあり、歌声がより記名性を獲得した印象だ。青春アニメのヒロインっぽさがある。

SNS:あるいは東京の歌ばっかりだ

こちらも水槽とクレマチスへの提供曲。どことなくGalileo Galilei的インディーポップなエッセンスを感じるサウンド。名曲の掃きだめこと『東京』への純然たるアンチテーゼを、「SNSは大草原」「東京は怪獣」と直接的な暗喩で示す。

『SNS:あるいは東京の歌ばっかりだ』歌詞より

わかる。

きみはテレプシコーラ

エイプリルフールの企画で限定公開されていた楽曲がまさかの再録。こんないい曲を一日限定にすな。ラストのコーラスパートは、コールアンドレスポンス映えするんだろうな〜と思うと、先日のワンマンに行けなかったことが大変に悔やまれる。

オフィーリアにもう一度

“不完全な夏”を体現する、まさに集大成。

前作収録の『2020年の初夏のこと』もアルバムを締めくくる重要なポジションの楽曲だったが、やはりあの頃と今とでは世間のムードや環境が異なっていて、当時はパンデミックにおける他者との隔たりや喪失感のようなものが装飾なく描かれていた。が、この曲にはモラトリアムにおける普遍的で刹那的な焦燥感が顕在しつつ、一方で、ティーンエイジャーへの決別的な大人びたメタな視座もあって、何度聴いても感情がぐちゃぐちゃになる。「オタルズ第1期最終回」感が凄すぎる。

総括

彼・彼女らが作る音楽の神髄は”シューゲイザー”ではなく”世界一とっつきやすい”の方にある。再生ボタンを押して一瞬でわかる、潔さすら感じる美しいメロディたち。1stの時点で大概な完成度だったが、今作はさらにセンスが爆発している。渾身のポートフォリオだ。

まだまだ暑い日は続きながらも、夕方になればやや秋風の気配も感じる季節になってきた。巡る季節とともに、ずっと傍にあってほしいアルバムだと思った。

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