というわけでSuchmosまで再始動ですよ。どうなってるんだ2025年。復活おめでとう!!!
開拓者
時は遡って10年ほど前の2015年頃、Suchmosというバンドがシーンの中心に食い込み始める。
はっきりいってこの頃の邦ロックシーンはそこそこ迷走していた。一大フェスブームが到来して猫も杓子も四つ打ち・邦ロックをルーツとした邦ロックバンドが台頭していた中、風穴を開けたのが流行ガン無視のソウル・ファンク・シティポップ・AORで殴り込みをかけたSuchmosだ。前髪長めのマッシュがテレキャスをかき鳴らしている横で、オールバックにノームコアでフェスのステージからお茶の間のCMまでジャックしていく様はまさしく時代の創設者だった。イノベーターだった。
功罪
後に邦楽シーンを振り返ったときに、Suchmosの前後で時代が分けられるのは確実。そのくらい伝説の存在だったといえる。
2016~17年頃には、「オシャレな奴は大体Suchmosを聴いている」という共通のバイアスすら醸成されていたように思う。それまでオーバーサイズのTシャツとディッキーズで溢れていた夏フェス会場にはYONCEのような肩の力が抜けたコーデの男性を見かけるようになったし、原宿でのアディダスのトラックジャケット遭遇率が飛躍的に上昇した。いちバンドがお笑い芸人のネタにまで出てくるのは異常事態ですらあった。下ばかり見ている人に「Slowdiveかい!」って突っ込んでるのなんか見たことないよ。とにかく「イケてるやつが聴くミュージック」の最適解としての浸透度合いが桁違いだった。
2020年代となる現代も、チルで低血圧な丸サ進行曲が乱発されまくっていて、粗製乱造な感も正直否めない。「これをやっとけばとりあえず”聴ける”」ことに多くの人が気づいたのだと思う。というかSuchmosが気づかせてしまった。それほどの影響力があったということだ。これは断言できる。
Suchmosをなめるなよ
前置きが長くなったが、これを踏まえて、Suchmosはなんちゃってオシャレミュージックじゃねえということを、ここで声を大にして言っておきたい。
まず彼らを一気にスターダムにのし上げた『STAY TUNE』について。
「和製ジャミロクワイ」の名を恣にした怪物級のアンセムだが、よくよく考えるとこれが大ヒットしている構図はかなり面白い。まず、シティポップリバイバルとも接続し得る洗練された都会性がありながら、その実東京をかなり冷ややかに見ているという歪さがある。
名言ばっか聞き飽きたよ
『STAY TUNE』歌詞より
うんざりだもう
そしてこれがオシャレミュージックの筆頭扱いをされているという皮肉さよ。当人ら(特にYONCE)も、おそらくこのジレンマに葛藤していたのではないだろうか。ほとんどカート・コバーンみたいなものだよ。時代の寵児。
そして、休止前にリリースされた3rdアルバムはまさかのドサイケ。僕含め当時のファンは「あれ……?」という第一印象だったと思う。
当時はそのあまりの方向転換ぶりに横転して顔なくなったものだけど、今になって聴くとかなりのクオリティだ。思えばこれまでもファンクやシティポップではあったけども、どこか一筋縄ではいかなさがあった。サウンドの中心にはかなり歪んだギター・ベースがあったし、ライブでは数分以上ギターソロを弾き続けるアレンジもあった。
たぶん、やっぱり根っこの方ではロックが大好きなんじゃないかな。
そして、2020年代。先述した通り空前のチルブームである中、Suchmosはというと修行のため活動を休止中。先駆者って絶対そうなんだよな。あり得ないほどデカいムーブメントを起こして、飽和状態になる頃にはどこか別の新天地に向かってるもんなんですよ(とはいえBa.HSU氏の死去はあまりに大きい損失であったと思われる。本当に惜しい才能を亡くした……)。
YONCEをなめるなよ
フジロックでのMCがネットを中心にイジられていたけど、YONCEをなめるなよということも言っておく。インタビューやライブMCで垣間見える彼のパーソナリティからして「おもろいこと言ったりますw」的なかましではないのは明白だったし、心ないミーム化は見ていられなかったですね……。どう考えても、明らかに彼はもっと遠くを見ている。
どこか超然的でありながら、活動休止中には農業にも従事しはじめたYONCE。カルチャーとアグリカルチャーの横断をサラッとこなしてしまっている。音楽シーンを切り拓くのも当然だよ。それにしても、このインタビュー感動しちゃったな。この人は本当に音楽と仲間と自然が大好きで、とても純朴な人なんだろうなと。
また風を吹かせてくれ
いろいろ書いたけどやっぱりSuchmosの再始動は嬉しすぎる。新曲もどんどんリリースされるのかな。また新しい景色を見られるのが楽しみで仕方がない。最後に大好きな曲たちを貼っておきます。

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