レミオロメン 魂のオールディスクレビュー:『朝顔』

disc review
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世紀の過小評価バンド、レミオロメン。

目下活動休止中の彼らへの偏見を解毒するべく、また、幼少期から聴いていた音楽の個人的な振り返りも兼ねて、全アルバムのレビューを行う企画の第一弾。今回は『朝顔』編です。

前回記事はこちら

『朝顔』は2003年にリリースされた記念すべき1stアルバム。21年前ですってよ。11曲中9曲は前作のミニアルバム『フェスタ』に収録されている曲の再録で構成されているので、活動初期から追っているファンにとってはあまり新鮮味がないかもしれない。

が、聴いてもらうとわかると思うのだけど、今でもほかのバンドと比べても全く遜色ないというか、めちゃくちゃオルタナで超かっこいいんですよ。『粉雪』しか聴いたことのない人に聴かせると失禁するレベル。のちに結成5年で武道館でワンマンライブを開催するまでに至っているし、1stの時点でVo.藤巻のソングライティングセンスの高さが隠しきれていない。

楽曲レビュー

まめ電球

早速ゴリついたベースラインとソリッドなギターで始まる名曲『まめ電球』。めちゃくちゃオルタナで良くないですか。レミオロメンはよく「歌が下手」と言われることもあるのだが、実はかなり演奏力の高いバンド。非公式で申し訳ないがこのライブ動画を見てもそれがわかる。前田のベースがとにかくヤバい。

レミオロメン - まめ電球
Remioromen(レミオロメン) First Oneman Liveの映像です☆

Bメロ(「人がうじゃうじゃ~のところ」)のメロがRadioheadのPolyethylene (Parts 1 & 2)に似ている気がするのだけど、レミオロメンのレはレディオヘッドからきているわけだしリファレンスとしてあると思うんだよな~。

雨上がり

後期レミオロメンでもライブでよく披露されていた定番曲。サビのエモーショナルな爆発力が特徴的で、まさに雨が上がった高揚感にぴったり。

日めくりカレンダー

これまた名曲。淡々と進行する曲調と、抗えない夏への情景……。

ビールとプリン

こちらも根強いファンが多い名曲。弾き語りでも映えそうだ。日常を歌う歌詞だが、いわゆる”バンドマン”と聞いて想像するそれではなく、恋人はいるし料理もビールもあるあたりむしろ幸せな方だし、なんなら今の時代に受けなさそうではある。お金はなくともささやかな幸せを描いているのが時代性かもしれない。今だともっと退廃的だもんね……。今更だけど「ビール(プリン体)」と「プリン」ってことですか!?

朝顔

イントロのコードがめちゃくちゃ聞き覚えがあるんだけど何だろう……。スピッツ感もあるし。歌詞はかなりおちゃらけた言葉遊びな印象強いが、藤巻の心象風景がそのまま投影されているのかもしれない。結構直感派なところがあるよね。

昭和

ダークで内省的なサウンドが特徴的な楽曲。相変わらずメロディセンスが光っていて、低空飛行なA・Bメロからダイナミックなサビへと展開されるのが、どこか不思議な爽快感があって気持ちいい。

すきま風

今作の中でもかなりBPMが速いパンクな2ビートのキラーチューン。歌詞を見ればわかるけど、全編通して初夏な楽曲が並ぶ中、この曲は秋口~冬の楽曲なんですよね。前曲から一転してアップテンポなのもあり、アルバムにおいて転換点としているのかも。

フェスタ

『フェスタ』もかなり人気の根強い人気曲。今作では珍しく、(おそらく自身への)ストレートなエールが歌われている。

電話

確かCMでも使用されていた楽曲で、初期のレミオロメンと聞くとこの曲のイメージが強い。サウンドは順当な邦ロックのフォーマットをなぞっているが、メロや歌詞がどこか昭和歌謡的でバランス感が面白い。ロックサウンドと歌謡曲の融合は今で言うと9mm Parabellum Bulletあたりが第一人者だけれど、レミオもかなり早い段階で目を付けていたわけですよ。鋭い。

タクシードライバー

『タクシードライバー』というタイトルに駄作はない(amazarashiや映画の方)。

追いかけっこ

アルバム最後を飾るのにふさわしいローテンポな楽曲。ギターのストロークがやはりレディオヘッド全盛時代のオルタナ感がある。

再評価されるべき鮮烈なデビュー作

このアルバム、聴いて受ける印象が「縁側」なんですよ。昭和的な日本家屋のイメージとか、それこそジャケットに描かれているような茹だる夏と麦わら帽子、田舎での何ともない生活と、君、みたいな。1stというのもあって、これからの未来への羽ばたきが示唆されている一方で、これまでの彼らの人生や地に足のついた生活も如実に反映されている点で、”窓から見える外界”という趣がある。

語弊があるかもしれないけれど、そういう意味でここからスターダムを爆速で駆け上がるようなイメージはあまり湧かないかもしれない(楽曲群のクオリティは破格であることを除いて)。エポックメイキングな革新作を次々に打ち出す天才ティーンというより、間違いないクオリティの作品をコンスタントにリリースする職人肌の実力派バンド、なきらいがある。そうしたアーティストこそ支持されるべきではあるのだが……。

メジャー移籍後は、周囲から、あるいは本人らの期待・羨望・焦燥などがごちゃ混ぜになって、やはりあちこちの調整が済まないまま飛び立たされ、空中分解してしまった印象が強い。もう少し、丹念に、じっくりと醸成していっても良かったのではないか。今となってはどうとでも言えてしまうのだけど。結果論でしかないのだけど。

という後悔の結果論も勝手に書けてしまうほどの名作だと思った。今でこそ再評価されてほしい。ぜひ聴いてみてください。

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