―不死鳥が眠りにつくその日まで― QUEEN + ADAM LAMBERT『THE RHAPSODY TOUR』ライブレポ

live report
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不死鳥って「死なない鳥」というイメージが強いけれど、神話によると、どうやら「何度も生まれ変わって命を紡ぐ」存在らしい。

先日、クイーン+アダム・ランバートの来日ドームツアー『ラプソディ・ツアー』の名古屋公演に参加してきた。実はライブのためだけに遠征するのは初めてでいろいろ緊張していたんだけど、幼少期からクイーンが身近にあったのもあって生涯ベスト級のとても素晴らしいライブだった。当日の感動や感情をなるべく留めておくためにも、簡単なライブレポを残しておこうと思う。

ツアースケジュール。初のドームツアー!

初めまして、ナゴヤドーム

ナゴヤドームに来たのは初めて。アリーナ席だったので、仮設されたパイプ椅子に着席する。パ、パイプ椅子か~……。そこかしこにフレディのコスプレをしたおじさまがいて面白い。

本編

開演時間が近づくにつれ、会場SEが切り替わるたびに歓声やクラップが巻き起こる。開演予定時間より5~6分押して、いよいよ会場が暗転。メタリックで荘厳な装飾が施されたステージに、プロジェクションマッピングが映し出されながらMachines (or ‘Back to Humans’)が流れる。そして、満を持してMCUのヴィランのような衣装に包まれたアダム・ランバートが登場。シルバーを基調とした服とステージセットと髪色がマッチしてて美しい。記念すべき一曲目はRadio Ga Ga!初クイーンのライブとしては最高の選曲だし、ラスト来日と目されるレジェンドバンドが

「Radio Ga Ga」歌詞より

なんて歌うとまた違った文脈を孕んでしまうのですが……と泣きそうになる。あと、何より歌が巧すぎ!!!!これまで通算数百本くらいライブに行ったけど、こんなに巧いボーカリストは初めてかもしれん。人は、あまりに歌が巧い人を目にすると自然と笑ってしまうし、声帯って楽器なんだなと再認識した。絶対喉から生まれただろ。これで歌手になってなかったら天罰下ってる。

続けて、映画「ボヘミアン・ラプソディ」で一気に知名度が増した印象のあるHammer To Fallと”負けて死ね”でおなじみAnother One Bites the Dustへ。ベースリフってシンプルであればあるほど良いんですよね。この辺でもうテンション爆上がりである。

ロジャーが作詞・作曲・歌唱を担当するI’m in Love with My Carでは、74歳にしてドラムを叩きながらあのハイトーンボイスで熱唱できるのは凄すぎるとしか言いようがないし、ステージに設置されたバイクにアダムが跨り歌うBicycle Raceでは思わず笑ってしまった。車検通らないどころか自走すらできないだろあれ。

名曲が立て続けに8曲演奏され、「これとんでもない瞬間を目撃しているのでは」と思うのも束の間、縦花道へ向かってブライアンがアコギを手にして歩いてくるではないか。期待の歓声に包まれながら花道の先端に設置された椅子に腰掛け、柔和なイントロを奏でLove of My Lifeをしっとりと歌い始める。いや、声綺麗すぎ……。華やかなアダムとエネルギッシュなロジャーからの、端然でエモーショナルなブライアンの温度差で耳風邪引きましたよ。しかも曲の終盤では、モニターには在りし日のフレディが映し出される(!)。今ここにいるブライアンが、フレディと手を握り合うような姿を見せる一幕も。泣くってこんなん。

続けて、美しい日本語詞のサビが光るTeo Torriatte (Let Us Cling Together)へ。モニターにはサイバーパンクな日本の風景が流れる。年始の能登半島地震もあってセトリに組み込まれたのだと思うけど、この曲をアダムが歌ってくれるのも嬉しいよ。泣くってこんなん。泣きゾーンかよ。

会場が暗転ししばらくすると、モニターに若かりしロジャーの姿が。かっこよすぎる顔面に見とれていると、カメラが切り替わり今のロジャーが映る。ここ本人もオーディエンスも笑ってて微笑ましかった。からのキレキレドラムソロ。70代の手捌きじゃないよ。

この後も名曲のオンパレードはとどまる所を知らず、ロジャーに引き続きブライアンのギターソロも控えていた。フルスクリーンで投影されるコズミックな映像をバックに、7~8mほどの高さまで上昇するステージで、プログレッシブなソロを弾くブライアン。ここの陶酔感は途轍もなくて、映像も相まって「ロックって宇宙なんだな」と感じざるを得なかった。そしてロジャーのときも散々感じたけど、こんな70代が世界のどこにいるんだよ。天文学者だし。

この後はアダムも再び登場。僕も大好きなKiller Queenも歌ってくれた。当初は機材トラブルにより名古屋公演でのみ演奏された曲とされていたようだけど、その理由としてこういう考察を見つけた。

クライマックスを彩るThe Show Must Go Onではアダムが圧倒的な絶唱を魅せるも、一瞬声が掠れてしまうパートも。アダムですら歌うのに苦労するキーの高さが恐ろしい。ラストは文字通りロックの歴史を塗り替えてしまった超絶讃美歌Bohemian Rhapsodyで本編終了。もう動けません。

アンコール

アンコール一発目はフレディによるおなじみAy-Ohから。散々コールアンドレスポンスをさせてからの「F〇ck you.」聴けて感無量です。からの間髪入れずに、ビートだけで世界を支配した錯覚に陥れるWe Will Rock Youへ。

その次はまさかのRadio Ga Gaのrepriseを挟み、これまた大名曲スーパーウルトラアンセムWe Are the Championsで大団円。バラードもおふざけ曲もアンセムも世界最高級なの何なんだよ、ほんとに、時代築きすぎだろ。圧倒的な多幸感に包まれながら、エンディングのGod Save the Queenが流れる中、サポートメンバーを含めた全員がステージ上に登場し、一礼。ツアー初日ながら破格の完成度を見せつけられた。

受け継がれる不死鳥の意志

素晴らしいライブだった。冒頭にも書いたけど生涯ベスト級。持ち前のパワフルさに年齢を経てねっとりさが加わったロジャーのドラムと、まったくキレの衰えないブライアンのレッドスペシャルが構築するサウンドに、アダムの華やかで巧すぎるボーカルが彩りを添える。一聴しただけで「ああ~良すぎる!!」と感じてしまうという意味で、クイーンには”スルメ曲”がないと思っているんだけど、それはジョン含めメンバーたちによるソングライティングの異常なまでの高さと、何よりフレディのあまりに稀代なボーカルがなせるものだと思っていたが、やっぱりアダムも規格外のスーパーボーカリストだった。爆発だった。

アダムがクイーンの楽曲を歌うことについて、当初は結構な反発があったと聞くし、なんならこないだ僕のインスタに流れてきた広告にも「こんなのクイーンじゃない」などとコメントがついていた。

が、音源でアダムの歌を聴けば聴くほど「そんなこと言えねえよ」という思いが強くなったし、ライブで見ると尚更確信に変わった。そんなこと言えねえよ、マジで。何度聴いても、アダムがフレディやクイーンに対して惜しみないリスペクトをしているのは明白だし、そもそも「こんなのクイーンじゃない」ってどういうことだよ。そりゃそうだろ、”クイーン+アダム・ランバート”なんだし。アダムは「俺たちがクイーンです!」などと言ったことは一度もないし、フレディはもういない。

おそらく初来日ライブから追っているであろうファンから、僕のように生まれた時からすでにフレディが帰らぬ人となっていた若い人までいろんな層のオーディエンスが会場を埋め尽くしていたが、一人残らず、アダムやブライアンやロジャーやジョンに対して愛と敬意のまなざしを送っていた。が、その一方で、ラスト来日ツアーだとされる今回のライブでも、フレディがもうこの世にいないことに対して完全に清算できている人なんていないのだろうとも思う。むしろ、このライブによってその喪失がより際立ってしまった人もいるのかもしれない。けれど、それでも、残されたオリジナルメンバーとアダムが、フレディと過去のクイーンが楽曲たちに込めた意志を受け継ぎ、未来へと紡いでいくためのライブだった。ブライアンもロジャーも、いずれはいなくなってしまう。そして、それはそう遠くない未来なのかもしれない。しかし、彼らの創ってきた財産は形を変えながら永劫受け継がれていく。不死鳥が何度も蘇って、また空を羽ばたいていくように。

セットリスト
Machines (Or ‘Back to Humans’) / Radio Ga Ga
Hammer to Fall
Another One Bites the Dust
I’m in Love With My Car
Bicycle Race
Fat Bottomed Girls
I Want It All
Love of My Life
Teo Torriatte (Let Us Cling Together)
ドラムソロ
Under Pressure
Tie Your Mother Down
Crazy Little Thing Called Love
I Was Born to Love You
(You Take My Breath Away)
Who Wants to Live Forever
ギターソロ
Is This the World We Created…?
A Kind of Magic
Killer Queen
Don’t Stop Me Now
Somebody to Love
The Show Must Go On
Bohemian Rhapsody

アンコール
We Will Rock You
Radio Ga Ga
We Are the Champions

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