伝説の写真家の回顧展『中平卓馬 火―氾濫』を見ていっちょまえにカメラ欲が刺激された

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東京国立近代美術館で、写真家中平卓馬の没後初となる回顧展「中平卓馬 火―氾濫」が開催されているので、行ってきました。

中平卓馬について

東京国立近代美術館公式サイトより

激動すぎる……。中平は戦後日本を代表する写真家の一人で、あの森山大道や篠山紀信らとも親交があったらしい。レジェンドクリエイターは孤高だという偏見もあると思うけども、意外と同世代の人たちとコミュニティを形成するパターンも多いですよね。

作品群

初期のモノクロ作品には『アレ、ブレ、ボケ(荒い画面、手ブレ、ピンボケ)』が多用されていて、今でこそオシャレに映るが、写真は美麗であるべきという風潮が普及していた当時にとってはカウンター的で、なんなら邪道ですらあったはず。が、やはり今の感覚で見ると端的に言ってもう超かっこいいんですよ。シューゲイザーの名盤のジャケっぽい写真ばかりだ。この時点でもう有象無象のカメラマンとは一線を画していたのだろう。

カラーになっても構図やタッチのセンスが図抜けていて、どれも圧倒的な求心力を感じる。ただただ見入ってしまう。

評論集「なぜ、植物図鑑か」では一変して自身の作風をスクラップ&ビルドすることになる。これまでのアレ、ブレ、ボケによる臨場感ある作風から、”図鑑に載っている写真”のようにスッと撮影された写真が多くなってゆく。この変わりようは凄かった。地元で定職に就かずにフラフラしていた親戚の兄ちゃんが黒髪でスーツを着ているのを見かけた感じ(?)。

記憶喪失後も結局カメラを握ってしまうというあまりにドラマチックな生涯。その後の作風はこれまでとガラリと変わって、どれも彩度がビビッドで、写真向きなオブジェクトを淡々と撮っていったという印象だった。まるで再結成して方向性が変わったバンドのよう。

感想

写真展に行くのはほとんど初だったけど、理論と実践の追及を諦めない中平の作品はどれも濃度が凄まじく、一目見ただけで圧が感じられた。この間見た映画「フェイブルマンズ」でも思ったことだけど、やっぱり”カメラはすべてを切り取ってしまう”ということを改めて認識させられた。

また、初期には公害問題を訴えるアナーキーな作品も多くて、カメラという一個のデバイスを通じてここまで急進的な主張をする創作者は現代にもいるのだろうか……?とも思った。今の時代は漂白されきったものしか受け入れられないような気がしている。

とても良かったのだけど、欲を言えば物販をもっと充実させてほしかったな~。公式図録も制作遅延しているみたいだけど、ポストカードくらいは欲しかったぜ。

会期は2024年4月7日まで。非常におすすめですのでぜひ!鑑賞後は家で眠っている一眼レフ持って出かけたくなるという卑近な欲求も沸きました。

中平卓馬 火―氾濫 (展覧会)- 東京国立近代美術館
2024年2月6日~4月7日に東京国立近代美術館(竹橋)で開催。戦後日本を代表する写真家の一人、中平卓馬(1938-2015)の没後初めてとなる本格的な回顧展。

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