勘弁してくれ。一年早すぎるて。「こないだ年明けませんでしたっけ?w」と話す大人を見てんなわけねーだろ……と思っていた子供時代が懐かしくなるくらいには、勘弁してほしいくらい時が過ぎるのが早すぎる。だって、普通に意味わからなくないすか。さすがに「体感一か月だったわw」とは思わないまでも、半年は経ってないだろ。一年って半年なくないですか。年末における一年の短さ嘆きトーク、もううんざりしていると思いますが、許してください。本当に勘弁してほしいんですこっちは。
そんな一年でしたが、2024年にリリースされたアルバム・EPの中から、個人的に好きなものをベスト10形式で列挙してみました。昨年以上に選出に苦労した。これも毎年言ってる気がするけど、今年名盤多すぎませんか?
10位:Destroy My Memory/The Otals
「世界一とっつきやすいシューゲイザー」を標榜するカートゥーンバンドThe Otalsの新作EP。シューゲイザーをベースとしながらも、根底にある呆れるほどのポップネスにより凶悪なスピードでファンを獲得しているバンドの新作は「セカイ系」がテーマ!今作はいわゆる正統派シューゲイザーとは異なり、どちらかというとアニソン文脈に近接しそうな楽曲が多いが、やはりそれは彼・彼女らのルーツの多様さとセンスの良さに他ならない。あとこれは各所で何度も自慢しているのですが、このEPが制作されたきっかけが当サイト(たぶん)であることはこれからも豪語していきます!!2ndライブも楽しみです。
好き曲:
天使にマーチンを…かわいすぎ
サイバー・パンク・カスケードQ…陰謀論てんこ盛り

9位:Dos Atomos/Dos Monos
日本が誇る爆裂オルタナティブヒップホップユニットDos Monosが、”第二期”と称しロックバンドに生まれ変わって還ってきた。知的なプログレッシブさと本能全開の野性的なアグレッシブさが両立したサウンドが超かっこいい。オープニングを飾る『HAROU』の「堪え難きを堪え」で始まる歌い出しが、空間を掌握する瞬間が何度再生しても新鮮に震える。令和という時代に、敗戦国として生きてゆくことをコンセプトとする凄まじさよ。レッツゴーすぎる。
好き曲:
HAROU…敗けて始まる新時代
UNDO…歌詞カードに載せられません
8位:MADRA/NewDad
アイルランドの四人組インディーロックバンドNewDadのデビューアルバム。一時期、この不穏なジャケットがTLを席巻するほどみんながベタ褒めしていた印象がある。シューゲイザー・ドリームポップ・グランジ等をルーツとするダークで重厚なサウンドと、神秘的なボーカルに何とも言えない中毒性がある。扱っているテーマも、いじめや薬物、依存症などサウンドイメージに違わずかなり重ためなのも特徴的。即ソールドとなった初来日公演も観に行けたのだけど、確実にこれから存在感を増していくだろうなという確信めいたものを抱かせる堂々としたライブでとても良かった。
好き曲:
Angel…暗いけど超キャッチー
Madra…ゲール語で「犬」
7位:LOST CORNER/米津玄師
陰鬱な楽曲に定評のあったボカロPから稀代のポップス覇者へと成り上がってしまった一人の男は、ジャンプ原作アニメ、ウルトラマン、朝ドラのタイアップを経てついには巨匠:宮崎駿のハートすら撃ち抜いてしまう。さながら「JPOP最終回」とも形容できる様相を呈したこの新譜は、ミニマルな曲数がアルバムのトレンドである現代に反して20曲も収録されたある意味時代錯誤的な超大作で、リリース初日で25万枚を売り上げるという時代錯誤的なセールスを記録してしまう。誰も米津玄師に勝てないし、止められない。まあそれはそれで。
好き曲:
毎日…米ちゃんには米ちゃんの地獄
POST HUMAN…生成AIとディストピア
6位:あい/w.o.d.
アニメタイアップも獲得し着実にデカくなっているネオ・グランジ・バンドw.o.d.の新譜。音楽が大好きだと常日頃から公言する通り、過去作と比べても最も音楽性に広がりがあることを示す仕上がりに。10曲というミニマルな構成にして、デジロック・パワーポップ・ガレージロック等あらゆるルーツを次々に覗かせながらも、根底にあるのはあなたへのあい(愛/I/eye)であるという、クリストファー・ノーランもニッコリの聴くインターステラーである。
好き曲:
Take It Easy…ずっとこうしていたいよね
2024…30歳になった僕ら
5位:MANTRAL/Galileo Galilei
2016年に活動を終了した俺たちの青春Galileo Galileiが2022年、華々しく復活を遂げた。翌2023年にはすぐさま新体制初のアルバム『Bee and The Whales』(超名作です)をリリースしたかと思ったら、今年はなんとそれぞれ14曲入りのフルアルバム『MANSTER』『MANTRAL』を二枚同時リリースした。どちらも素晴らしい作品だったけど、僅差で再生数の多かったこちらをランクインさせていただきました。それにしても、活動休止中はソロプロジェクトや事実上のフランチャイズバンドBBHFの活動&リリースに加え、来春にはまたまたGGの新アルバム『あおにもどる』をリリースするというもはや狂気じみたクリエイティビティ。そして、そのどれもが粒ぞろいのクオリティ。今のGGは本当に無敵状態だと思う。絶対にもっと評価されるべき。
好き曲:
MANTRAL…超弩級のホモソーシャルシューゲイザー
やさしいせかい.com…世界をあきらめない
4位:see you, frail angel. sea adore you/Homecomings
飛ぶ鳥を落とす勢いの京都出身バンドHomecomingsの新作。土地性やフォークルーツ性もあってくるりとの共通性を見出してしまう(実際フックアップもあった)が、今作の多様さとその爆発力はこれまでのリリースと比べても桁違いに感じられ、疑いようのない名盤。「誰が聴いても良いに決まってんだろこれ」という一種のゾーンみたいなものに入っちゃっていて、身も蓋もない言い方だけど、跳ねる直前の羊文学に似たオーラを感じる。というかジュリアン・ベイカーやマック・デマルコらと共演しているのはもう……な気もする。サポートメンバーもユナ氏(ex.CHAI)やThe Novembersの吉木氏など超豪華。
好き曲:
slowboat…大名曲。Niceboat.
luminous…ついにホムカミ流シューゲイズ降臨
3位:GRAND POP/PAS TASTA
PAS TASTAとは、hirihiri、Kabanagu、phritz、quoree、ウ山あまね、yuigotの6人で構成される、がんばって音楽を作っているユニット、だそう。軽いな~。全員がコンポーザーで音楽プロデューサーでもあるからか、曲ごとに何もかもが目まぐるしく変化していくもんだから、通しで聴くとかなりのハイカロリーなイメージだったのに、THE CARまで聴き終わるころには不思議と謎の爽快感が残る。GRAND POPの名に恥じない、インターネット時代における超ド真ん中のポップス。それにしてもこの車なんなんだよ。
好き曲:
BULLDOZER+…闘牛かわいそうじゃん!!
B.B.M. (feat. ピノキオピー)…このスリッパ要る?
2位:Love is Over!/Moritasaki in the pool
眩い水面のきらめきを纏う京都の新進気鋭ドリームポップバンドMoritasaki in the poolが初のフルアルバムをリリース。EP二作でパッケージングした空気感をそのままフルアルバムにも昇華させたような、これこそMoritasaki in the poolじゃいという、確かな手触り。誰もモリタサキを見たことがないのに、誰もが見たことのあるあの夏のプール。酷暑のような轟音ノイズに被さる光のようなコーラスワークのギャップに、体温は急上昇し血圧は急降下だ。
好き曲:
MIRROR’S EDGE…チョーキング?きもちええ~
Guernica…音のない教会でカモメと話していた
1位:Empire/yonige
信じられます?彼女らこないだまで元カレにアボカド投げつけてた元ナインスアポロ所属のガールズバンドだったんですよ。それがこんなにスタイリッシュで、いなたくて、洗練されてて、泥臭いインディーロックバンドへと羽化した。こんな和製boygeniusみたいなバンドへ進化する未来を誰が想像できただろうか。
実を言うとこのアルバムがリリースされるまで、直近のyonigeはほとんど聴いていなかったんですよ。嫌いになったとかではなく、なんとなく聴かなくなっていくやつです。きっかけは特になく、他のバンドばかり聴いていたとか生活が忙しくなってきたからとか、そういう本当になんとなくな類のやつ。
そんな中、通勤中にふとSpotifyの通知を見たときに先行シングルとしてwalk walkが配信されているのが目に入り、これもまたなんとなく再生したんですよ。「わ~yonigeだなっつ」とか思いながら。というかもはや言ってた。ちょうど去年の今頃の寒い時期で、川沿いをぼーっと歩いていた時だった気がする。きっかけなく聴かなくなっていたのに、聴くときもまたなんとなく。
今のyonigeやばくね!?と理解するにはこの曲だけで充分すぎるわけだけど、年明けすぐにリリースされたこのアルバムを聴くとそれは確信に変わる。今までとはあまりにレベルが違う。即チケットを取って参加したレコ発ツアーでは「今が一番楽しいです」としきりに語っていた。昔「かっこいいな~」と思って聴いていたバンドって、やっぱり今もかっこいい。そういう、ありきたりであたりまえだけどあたりまえじゃない体験をさせてくれたというのもあって、とても思い入れのあるアルバム。
好き曲:
walk walk…Hey!
DRIVE…疾走感とフライングV
a familiar empire…後悔は消えないから
おまけ(11位タイ)
他にも良かったものを列挙してみた。以下すべて11位タイです。リリース順不同です。超長いです。
今年もいろいろ出会えて幸せだー。来年もよろしくお願いします!
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